月白(つきしろ)の道   丸山豊

  <一名なりと生き残って、のちの世代へ語りつぐべきだ。

                 これだけは読んでほしい、文学的従軍記の傑作>


    『インパール作戦の下、北ビルマのミイトキーナでの戦闘での水上源蔵少将

     を陸軍軍医中尉の丸山氏(第56師団歩兵)が書き残した従軍記である』


 軍司令部より水上少将のもとへ暗号電報が次々届く


          『水上少将ハミイトキーナを死守スベシ』
          『貴官ヲ二階級特進せシむム』

          『貴官ヲ以後軍神トショウセシム』


 この電報を全部無視し、彼は自決し、


         『ミイトキーナ守備隊ノ残存シアル将兵ハ南方へ転身ヲ命ズ』


  皆、生きて帰りなさいの指示だったそうだ。要するに、今も通じる事であるが現場の

  リーダシップは発揮されていたと書かれている。この命令のおかげで丸山氏は祖国の

  土を踏むことが出来たのである。その丸山氏が著書の中で、


   『虫歯』と言う一文を書かれている。



  私たちはお互いに心の虫歯をもっておいたほうがよい。ズキズキと虫歯がいたむたびに

  、心の奥の一番大切なところが目ざめてくる。でないと、忘却というあの便利な力をか
 
  りて、微温的なその日暮らしなかに、ともすれば安住してしまうのだ。さえざえとした

  一生を生きぬくには、ときどき猛烈な痛みを呼びこむ必要がある。

   私にとって、戦争の記憶は、とりもなおさず、抜歯のきかぬ虫歯である。折にふれて

 痛みだし、世間智におぼれそうな私を、きびしい出発点へひきもどす。



 凄い本であるね。読んでみてください。丁度、明日からかな 日本で一番長い日だったかな

 映画がはじまるそうである。