あとがき 


 ≪逆説の日本史≫ 戦国野望編



       鉄砲伝来と倭寇の謎    井沢元彦


   現在の情勢を考えると 第八巻(中世混沌編)の(あとがき)そのままに

   使ってもいいくらいだ その時に指摘した〈情報戦・宣伝戦と国際訴訟

   を組み合わせたような新しいタイプの戦争〉が サンフランシスコ講和

   条約調印五十年の記念日前後に にわかに活発化してきた

    アメリカで起こっていることだから 〈対岸の火事〉だなどとのんび

   りしていると 手痛い打撃を被ることになるだろう

    既に日本は〈倭国〉問題において 中国・朝鮮半島に対して大敗北を

   喫している 〈倭寇という残虐な存在はすべて日本人のことだ〉などと

   いう主張は とんでもない〈いいがかり〉に過ぎないことは 本文を読

   んでいただければ誰でも容易に理解できると思うが その容易に<理解で

   きること>が日本国民の常識にも 東アジアの常識にもなっていないこと

   を 日本人はもっと認識すべきである

    <対岸の火事>といえば アメリカ合衆国の同時テロがある もっとも

   同盟国であり しかもセキュリィティの甘い日本は この本がでるころ

   は狙われているかもしれない 不吉なことはあまり言いたくないが こ

   のあたりも真剣に考えておかねばならないことだ

    読者の中に <第三次世界大戦>は<情報戦>と言っていたのに その予

   測ははずれたとのではないかという人がいるかも知れないが そんなこ

   とは この同時多発テロにしても情報戦略は活発に行なわれているし 

   そもそも<資本主義の象徴>を<殉教者>が討つというのも情報戦略である

    またテロ自体について 既に五年前に出した第四巻≪中世鳴動編≫の

   第六章で<これからは国と国との戦争より国家とテロ組織の間の≪戦争≫

   が盛んになる可能性がる>と予測している

    とにかく セキュリィティも自己主張も 日本人にとっては最も苦手

   分野である

   その苦手分野をこれから克服していかねばならない まさに日本人にと

   っては嵐の季節が始まったのである

    
             二〇〇一年九月十四日記す 
 

  
    凄い見識だ ほんとにな  (−−〆)